自己効力感とはなにか?頻出概念の基本をおさらい!
こんにちは!OTだみんです。
最近、「自己効力感」というワードをよく耳にしますよね。
「自己効力感」はベテランOTや教育者によく使われる言葉です。
しかし、なんとなくの理解はされているものの、正確な定義を知って使っているでしょうか?
「自己効力感」の正確な定義や種類は、OTやPT、医療職全般において、あまり理解されずに使われているように思います。
こと作業療法を行う上で大変重要な言葉なので、これから作業療法士になる学生さんや新人さんにはあらためて「自己効力感」の定義や基礎的な知識について覚えていてほしいと思います。
では、さっそく「自己効力感」という言葉について掘り下げていきましょう!
「自己効力感」という言葉が生まれた経緯
「自己効力感」という言葉の提唱
Banduraという心理学者によって、20世紀後半に提唱された概念が
「自己効力感(Self-efficacy)」
です。
もともと、これは
社会的学習理論というものからできています。
社会的学習理論とは
社会的学習理論とは、
「人間は自身の体験だけではなく、他者の行動を観察・模倣することでも学習する」
ということを前提に作られた理論です。
他者やまわりを観察することで、やり方を指示されていなくても、なんとなくカレーの作り方がわかる、電車の乗り方がわかる、のような感じですね。
これは大切な能力です。なぜなら、年長者や親、有名人をマネして、子供たちは様々なスキルを幼少期に学習しようとするからです。
例えば、「おままごと」「ごっこ遊び」もそうですし、はやりの芸人のネタはすぐに浸透したりしますよね?
好きな漫画やアニメのキャラクターのマネをしたりもします。
そんなスキルを習得する上で必要不可欠な、模倣=「モデリング」のための重要な理論のことを「社会的学習理論」と言います。
そして、その一部を占めるのが「自己効力感」です。
もともと、自己効力感の提唱者であるBanduraは、人間の行動には
- 先行要因
- 結果要因
- 認知的要因
があるとし、
もっとも重要なのが「認知的要因」や先行要因の「予期機能」であると説いた。
予期機能は
「結果予期」+「効力予期」
の2つで成り立っており、
行動に移る前の「うまくできるだろうか」が「効力予期」
行動中の「この行動の結果、どのような影響を与えるだろうか」が「結果予期」とした。
実はこの「効力予期」が以後「自己効力感」と呼ばれるものになります。
ちょっとわかりにくいですかね?
では簡単な例をあげましょう。
自己効力感とは、
「自己効力感」

私は〇〇をうまくできる!

私にとって△△をするのは難しい…
という判断のことだと思ってください。
ここまでが総論です。いわゆる触りの部分ですね。
これからの文章は、その自己効力感を掘り下げた話になります。
また、どのように作業療法や教育に応用していくか、というところになります。
では、「各論」に移っていきましょう。
「自己効力感」について深く理解し、応用しよう
自己効力感には2つの種類がある!
まずは、自己効力感には大きく2つある!ということを知る必要があります。
自己効力感は大きく分けて以下の2種類があります。
- 課題特有の自己効力感
- 特性的自己効力感/一般的(性)自己効力感 (→GSE)
それぞれについて具体的に見ていきましょう。
課題特有の自己効力感
まずは、課題特有の自己効力感から。
これは、
「あなたは英語の勉強ができますか?」と聞かれて、
- 「できる」
- 「一人じゃ難しい」
- 「もう何年もしていないから難しいと思う」
といった話と同じです。
上記では「英語学習」というところに限定しているので、「数学学習」に関しては別ですし、「英語テストでいい点数をとる」となると「勉強ができるか」という話とは正確には異なるため違うのです。
つまり、課題や場面に限定した自己効力感なのです。設定された課題や場面以外のことは関係ありません。
特性的自己効力感/一般的(性)自己効力感(GSE)
一方で、
特性的自己効力感/一般的(性)自己効力感(以降GSEと呼びます)
は、その人が曖昧に持っている、なんとなくの「できそうか」を評価します。
先ほどの課題や場面に限局したものとは違い、全体的になんとなく、です。
GSEが高くても、転倒するかどうかの自己効力感は低いかもしれません。
でも、日常生活の行動を総じてその人はなんとなく「できそうだ」と思っている。といったものですね。
たとえば、現代人の多くには「漠然とした不安」って感覚がありますよね?
先の見えない漠然とした不安。
その「漠然とした」という感覚に近いものがあります。
「漠然として」「なんとなく」「できそう」という感覚だと思ってください。
私は教育現場にはなかなか今は携わっていないので、正確なことはお話しできませんが、
臨床現場では、みなさん、このGSEと課題固有の自己効力感を混ぜて使ってしまい、よくわかっていない、ということが起こっています。
ぜひ、自己効力感について語る際は、正確な区別をつけて話せるようにしてくださいね!
ちなみに、余談ですが
GSEと課題特有の自己効力感はつながっているかということについては、まだ解明されていない(2021年3月現在)のです。
一方が高いならば、もう一方も高い、などとはまだ言えない段階だということですね。
この2つがつながっているかどうかを研究し、解明できれば、すごく大きな研究となり、世界中に名がとどろくでしょう。
「自己効力感」を臨床で応用するためには
では、「自己効力感」のこれらの知見をどう臨床で応用すればよいでしょうか。
以降はあくまで持論です。
今まで、課題特有の自己効力感に関する研究はまあまあされてきています。
しかし、私はGSEのほうにより着目すべきだと思っています。
なぜなら、課題特有の自己効力感はその課題についてにおいてのみですが、
一方GSEは、さまざまな行動の自己効力感に影響を及ぼしていると言われているためです。
GSEが高ければ、「私はいろんな行動をどうにかすればきっとできる」という感覚になっていると思われ、生活が不活発になりにくいと思います。
つまり、認知症も進みにくく、身体機能も比較的維持しやすいのではないか、と。
GSEは抑うつなどの精神的健康・主観的健康観・自尊心・生活満足度と関連していると言われています。
そこで、OTだみんは、GSEとADLや身体機能・歩行状態・IADLとの関連性を検討した研究を行ったのですが、全然関連がありませんでした…
私はいま現在、このGSEには、以下のような要素が関係しているのではないかと思っています。
- 本人にとって価値がある行動ができるかどうか
- 集団の中に属している、つながっているという感覚
- 他者のために自分が行動でき、他者に喜ばれるという感覚
ですので、GSEを上げていくには、
- 生活行為向上マネジメント
- COPM
- ADOC
といった、その人にとって大切な活動を評価し、できるようにすることが重要であると考えます。
まとめ
今回は、自己効力感という概念の由来や、2種類の異なる自己効力感の区別の話について詳しくお伝えしました。
作業療法士として介入するときだけでなく、先輩やプリセプターとして後輩を指導する際や、学問の垣根をこえて広く教育の現場においても、自己効力感という概念を正しく使いこなせることが円滑な仕事につながることは間違いありません。
ぜひ、これからは自己効力感と聞いたら、2種類のうちどっちの自己効力感の話をしているんだろう?とツッコミを加えて考えてみてくださいね!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
以上、OTだみんでした!
参考文献
池辺さやか,三國牧子:自己効力感研究の現状と今後の可能性.九州産業大学国際文化部紀要57.159-174.2014
青木邦男,松本耕二: 在宅高齢者のセルフ・エフィカシーとそれに関連する要因.社会福祉 学 41 (2):35-48.2001
三好昭子:人格特性自己効力感と精神的健康との関連―漸成発達理論における基本的信 頼感からの検討―.青年心理学研究,19:21-31.2007
成田健一,下仲順子,中里克治,河合千恵子,佐藤眞一, 長田由紀子:特性的自己効力感尺度 の検討-生涯発達的利用の可能性を探る-.教育心理学研究,43(3):206-314.1995
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