股関節・腰関節への介入戦略【基本の考え方】 | 現状維持OTを脱す!

股関節・腰関節への介入戦略【基本の考え方】

股関節・腰関節への介入戦略【基本の考え方】 実習生・新人に向けて

股関節・腰関節への介入戦略【基本の考え方】

こんにちは!OTだみんです。

この記事は、疾患に入って詳しい情報を知る前に、大まかにこのように介入して欲しいという指標を提供するものです。

疾患の知識は大切です。

でも、各疾患に共通した、リハビリテーション介入方法考え方があるので、それを知っていると強いです。

術法が違えど、骨折部位が違えど、共通のやり方があるんですよ。

では、前置きはこれぐらいにして、今回は一番スタンダードな介入である股&腰関節からいきましょう!

股関節・腰関節への介入の基本

腰・股関節は基本的に手術療法であれば、術後、早い時期からリハビリを開始することができます。

保存療法は、患部外の筋トレや創部の皮膚操作、寝返り訓練などになります。

OTだみん
OTだみん

ここでは、基本のき、ですので、保存療法の話はまた別の記事で解説します!

股関節・腰関節への介入ー全体の流れを把握しよう

腰・股関節への介入の流れとして

  1. トイレ動作の獲得
  2. トイレまで移動する能力の獲得
  3. 更衣動作の獲得
  4. 歩行形態のレベルアップ
  5. 入浴動作の獲得
    ー(ここまでが最低限)ー
  6. 屋外歩行訓練
  7. 床からの立ち上がり動作
  8. 料理/掃除/整理整頓訓練

と、発展していきます。

では、それぞれの訓練内容を詳しく見ていきましょう!

股関節・腰関節への介入ー1~5

まずは腰・股関節への介入の流れの前半戦、

  1. トイレ動作の獲得
  2. トイレまで移動する能力の獲得
  3. 更衣動作の獲得
  4. 歩行形態のレベルアップ
  5. 入浴動作の獲得

について解説していきます。

1から5までは、ここまでできれば退院してもいいのでは?という目安となる能力になります。

1.トイレ動作訓練

トイレ動作訓練に必要なのは、以下の3つです。

  • 起立動作
  • 立位保持
  • 下方リーチ動作

平行棒内で両手で行っていき、慣れてきたら最終的には両手離して行います。

片手でできるレベルになれば、実動作訓練を行っていきます。

実際にトイレで行う訓練ですね。

2.トイレを自立させるための移動能力の確保

次に考えないといけないのは、トイレを自立させること。

本人の尊厳も加味して考えないといけないので、1と同じ時期からなるべく始めます。

考えで2つ

  1. ベッドサイドでポータブルトイレを利用する
  2. トイレまで移動する

ベッドサイドでポータブルトイレを利用する

1は、起居→座位保持→移乗動作→下衣操作

つまり、ベッド周りの自立ができれば、トイレ動作がOKであれば自立になります。

トイレまで移動する

2は、どうやって移動するか、によります。

  • 車椅子自走
  • 歩行器歩行

大体どちらか2つですね。

車椅子自走は、1とほとんど同じプロセスに、プラス車椅子自走能力が追加されます。

危なくない移動と、トイレに移動する際のブレーキ、ポジショニングを覚えてもらうという感じです。

歩行器歩行は、歩行器で歩ける、ということが前提です。

歩行器が安定して行えており、転倒リスクが少ないと判断している、ということです。

病棟歩行器自立を許可するにあたり、トイレ動作が安定していることが必要です。

という感じですね。

歩行器も、操作性とポジショニングが大切です。

歩行器自立にいくにあたり、以下のような過程をたどります。

  • 平行棒内歩行
  • 歩行器5m介助
  • 歩行器5m自立&病棟半周介助歩行
  • 病棟1周介助歩行
  • 病棟1周自立
  • TUG13秒や10m歩行速度24秒といった基準クリア

ちなみに、この病棟歩行器自立への過程に関してはかなり時間がかかる方もいるため、次の下衣動作訓練と一緒に訓練を行なっていきます。

3.更衣動作の獲得

股関節の疾患の場合は、下衣の動作が困難になりやすいです。

理由として、下衣に足を通す場合、股関節の自動ROMが90度近く必要です。

悪い方から履く、良い方から脱ぐようにすると、必要なROMが少なくてすみますし、あまり悪い方の足をあまり動かさなくてすみます。

必要なのは、

  • 股関節屈曲筋力
  • 大腿四頭筋筋力 
  • 股関節外内旋筋力
  • 腰部、股関節部の柔軟性/ROM

です!

模擬動作訓練→実動作訓練 と移行していきます。

模擬動作は、本人のズボンでも、セラピストが持っているやつでもいいですよ。

4.歩行形態のレベルアップ

2と3が可能になってくると、「杖歩行」が次の目標になります。

ご高齢の場合、かつ、立位バランス能力が上がりきらない場合、屋外シルバーカー、屋内歩行器を検討します。

この情報は、早めにソーシャルワーカーさんやケアマネさんに連絡する必要があります。

レンタルができるならば、本人の負担が減りますよね?高いお金を払わなくて済むわけですから。

あとは、大きい項目にはないんですが、ここのステージぐらいで靴の着脱動作がやってきます。

股関節のROMが拡大すれば、動作自体が可能です。

よって、この時期では

  1. 歩行観察、評価、実動作訓練
    実際に病棟で歩いてもらう、というものです。段階は歩行器と同じです。
  2. 股関節ROMの拡大(自動)
    他動であがろうが、自分で動かせる範囲にいかないとADLに反映されません。
  3. 平行棒内での歩行訓練
    これは片手で歩いてもらうことに慣れる、と、CKCexが含まれます。
    CKCexとしては、横歩きと後ろ歩きです。ともに臀筋を鍛えます。
    OKCexとして、中臀筋や大臀筋に介入しても構いませんが、過負荷にならないようにします。

この段階は、並行して5.を行います。

5.入浴動作の獲得

入浴動作に必要な能力として以下があります。

  • 片足立位 跨ぎ動作
  • 低所からの起立 ※補助道具、介護用品で補助可能
  • 立位バランス 動的安定性
  • 歩行時のバランス 

では、これらの能力が必要な理由を見ていきましょう!

バランスに関わる能力

バランス系は転倒防止です。

両手が使えないと1人での入浴は困難を極めます。

体を洗う動作、拭く動作で手すりから両手を離す必要があると思います。

片足立ちも、浴槽の中に入るなら必要な動作。

臀筋と体幹の機能がないと満足に行うことができません。

跨ぎ動作訓練 平行棒内で物を跨ぐ動作訓練

下の物を拾う訓練 日常動作でも使いますし、バランスの訓練としても使えます。

低所からの起立動作

入浴時には、しゃがんだり、本人の文化次第ですが、丸椅子に座って体を洗ったりします。

ですから、低いところから起立できるだけの下肢筋力、骨盤の柔軟性が必要になります。

これがないと、上肢でカバーしようとして、転倒を引き起こしやすくなります。

また、そもそも起立自体できないため、入浴が1人では難しくなります。

歩行の安定性

床が水で濡れているため、より強固な歩行の安定性が必要になります。

ですので、最低限、平地では安全に伝い歩きができることが前提です。

福祉用具を導入できない場合、壁の伝い歩きになることもありますので、能力は高ければ高い方がいいですよね。

介入方法としては、タンデム歩行、病棟内歩行(デュアルタスク)といったものがあります。

とりあえずここまでできれば、退院してもいいのでは?という感じになります。

OTだみん
OTだみん

ここからは、

  • 病状の回復状況
  • 本人や家族と目標をどこに設定したか

という部分にかかってきます。

ですので番号が一応ついていますが、正直番号を飛ばしてもいいですし、なんなら5で終わってもいいです。

股関節・腰関節への介入ー6~8

ここからはプラスアルファとしての介入方法を解説します!

6.屋外歩行訓練
7.床からの立ち上がり動作
8.料理/掃除/整理整頓訓練

6.屋外歩行訓練

これは本人が歩行で外出することを前提に作られています。

デイサービスに通わせたい、とか、近くのスーパーまで一緒に買い物にいきたい!という目標がある場合はここの介入が必要ですし、自分でゴミ出しをしないといけない場合も、屋外歩行訓練をやっておく必要性があります。

訓練内容は

  • 距離を伸ばす
    →スーパーや百貨店に行きたい場合
  • 持つ荷物の重さを上げていく
    →デイサービスや杖歩行での1人での買い物を想定している場合

といった感じです。

この2つを組み合わせていくことが必要です。

7.床からの立ち上がり

寝具がベッドではなく布団の場合、もしくは、床に座る生活をしている場合は、床からの立ち上がり動作は必須です。

この「床からの立ち上がり」というものは、

  • 股関節を過度に曲げる
  • 腰を過度に曲げる

動作があるため、訓練中に負傷しやすいです。転倒にもつながりやすいため、注意が必要です。

基本的には

  • 掴まるところに捕まって起立する
  • なしで起立する

の2つでありますが、高齢者に限っては「何もなし」で立ち上がる動作を導入することは私は反対です。

動作ができることで過信が生まれ、退院後身体状態が悪くても「なし」で起立しようとすると転倒につながる恐れがあるからです。

訓練内容としては、実動作訓練が主です。

実際に起立させることで訓練になります。

また、補助的に行ったり、自主トレ指導をしたい場合は、スクワットがおすすめです。

8.料理/掃除/整理整頓

最後に出てくるのがこの3つです。

  • 料理
  • 掃除
  • 整理整頓

全てにおいて、実施させるうえで注意事項をしっかりと伝えて、転倒に留意しながら介入していきましょう。

料理

料理だけは特に気をつけないといけません。

認知機能を評価しつつ、

  • デュアルタスクができない
  • 短期記憶障害が顕著

の場合、IHに変更させるか、料理を諦めてもらう必要があります。

火事につながるからです。

掃除

掃除は、掃除に何を使うのかによっても変わります。

クイックルワイパーや、掃除機を使う場合は杖代わりにすれば問題ないです。

しかし、元々掃除機は使わない人、つまり雑巾や箒を使う場合は訓練しないといけないですね。

整理整頓

整理整頓には、皿洗いも含めます。

どちらにせよ、棚に物を入れる動作、引き出す動作は必ず必要です。

整理整頓を分解すると、屈む、伸びる、手を伸ばす、重いものを持つという動作が必要です。

ですので、実際にその動作をやる動作は実動作訓練、似たような環境をセッティングして行う模擬動作訓練を行っていきましょう。

まとめ

ということで、訓練内容を書いていきました。

これらの内容は介入の基本なので、ここから自分のオリジナルを入れていく、という感じになります。

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