【学生向け】作業療法士のタマゴのための職業体験
こんにちは!OTだみんです。
学生や新人のときは、作業療法士がどんな仕事をしているのか理解できてない状態で勉強することが多く、

「なんでこんなに勉強しないといけないんだろう?」
「今勉強していることはなんの役に立つのだろう?」
と思いがちではありませんか?
そうした心理状態では、勉強してもなかなか頭に入りませんよね。
そこで今回の記事では、
- 作業療法士の具体的なお仕事内容
- お仕事をするために必要な勉強や知識
について、具体的にイメージができるように解説していきます!

まるで職業体験のように、作業療法士になった想像をしながら読み進めてくださいね!
病院の作業療法士になってみよう
作業療法士が今1番多く働いているのが病院です。
そこで、今回は、1人の患者への介入の様子を見てもらおうと思います。
症例をみてみよう
今回見ていく患者の情報がこちらです!(※架空の情報です)
80歳 男性 右大腿骨頸部骨折 DMあり
自宅内で転倒し、受傷。一軒家で生活スペースは2階。
夜中救急搬送されたため、当直医が夜中に牽引整復。翌日にORIF施行。
午後にリハビリテーション依頼あり、指示書が届く。
専門用語が入っていて、よくわからないですよね。
これは、要点を簡単に言うと
転んで右足の付け根を折りました。
DM=糖尿病なので、糖尿病の管理に気をつけながらリハビリを進めてくださいね。
(食前食後の介入に注意することや、低血糖の症状に注意する、ということですね。)
ここまでの基本的な内容は、2年生の後期から3年生で習いますよ!
この患者さんは、救急車で運ばれて、手術をしたのですね。
持病があるため、気をつけながらリハビリをしないといけないようです。
一般的なイメージのリハビリ、たとえば平行棒を使って歩く練習をするなどは、実は「理学療法士」のリハビリ内容になります。
作業療法士もすることはあるのですが、作業療法士にはもっと考えなければいけないことがあります。
では、作業療法士の思考を一緒に追ってみましょう!

今回は、
- 専門用語をなるべく使わずにわかりやすくお仕事の流れを記載した「作業療法士の思考(入門)」の章
- より専門的な知識を交えて解説している「作業療法士の思考(詳細解説)」の章
の2つを用意しました!
新入生など、まだ専門的な知識を持っていない学生さんや、ざっくりとした仕事の流れを理解することに重点を置きたい人は(入門)の章を
大学3年程度の専門的な知識を持った状態で、(入門)を読んだうえでより詳しい補足情報やそれぞれのプロセスで必要な専門知識を見たい人は(詳細解説)の章をご覧ください!
作業療法士の思考(入門)
作業療法士の思考(入門)では、専門用語をなるべく使わずにお仕事の流れや内容をイメージしてもらえるように書いています。
作業療法士の思考ー「急性期」
病気してすぐの期間を「急性期」といいます。
この期間に作業療法士が考えることは、下のとおりです。
- 自分で病室のなかで生活できるようになってもらうこと
- 生活リズムを整えること
- 自分のやりたいことが最低限叶うようにすること
これらを解決するために、日常生活活動を分析したり、適度な運動、規則的な食事といった生活習慣の改善を促したり、自分の意志で活動をできるように環境を整えたりします。
また、体を十分に直して万全にリハビリに取り組んでもらうために、体の状態についても管理するお仕事がありますよ!
- 血圧や酸素が足りているか
- キズが悪化していないか
- 血の中にいろんな情報があるので、採決結果を確認する

作業療法士のお仕事に必要な具体的な知識については、後半の「作業療法士の思考(詳細解説)」で詳しく説明しますね!
作業療法士の思考ーリハビリ開始
入院してから時間が経過してくると、患者さんのキズが良くなってきます。
そうすれば、本格的にリハビリをしっかりやっていく時間になります。
さて、この時点での着眼点は2つあります!
- 自分で病院の中を動き、生活できるようにする
- 患者本人と面談をして、目標を決める
自分で病院の中を動き、生活できるようにする
病院での生活を円滑に進められるようにフォローします。
着替えや洗面といった自室でできることはもちろん、お風呂やトイレ、買い物や洗濯などです。
患者本人と面談をして、目標を決める
面談の中で、患者がどんなことに興味があり、どんな役目を持っていて、どんなことをやるべきだと思っているのかを聞き取ります。
また、面談を退院後どんな生活になるのかを一緒に想像する機会にします。
本人の意図や気持ちと現実のすり合わせを行います。
本人の望むゴールを実現するための道筋を考え、相手の了承を得ながら何をやるべきか考えてリハビリの計画を立て、計画書を作成します。
作業療法士の思考ー面談
では、今回の患者さんについて、面談の様子を覗いてみましょう!

おうちでは、1日をどう過ごしていましたか?

まあ、テレビ見て、食べて、寝てって感じですね…

1週間、毎日そのような感じでしたか?

いや、最近はデイサービスに通えって言われて、嫌々だけどデイサービスに行ってます。

デイサービスでは、何が楽しいですか?

麻雀かなぁ。あそこ麻雀できるんですよね。
雀荘(麻雀できる施設のこと)になかなか行かなくなったので、デイサービスでできるのは嬉しいですね。

それでも、デイサービスは楽しくないのですか?

運動があまり好きでないからですね…あそこは運動しないといけないから。筋トレとか。

麻雀だけは楽しいんですね?

そうですね。
将棋できる人もいるから、人数がいなかったら将棋もするし…

いいじゃないですか!
ボードゲームのためならデイサービスに行くのもいいんですね?

そうですね。嫌いではないです。
この情報から、本人がやや嫌がっても、家庭の事情でであったり、ケアマネージャーさん(1人1人のサービスを組み立てる人)から、デイサービスに通うことを強く勧められる可能性があります。
そこで、頭の中では、「デイサービスに外出できる能力」が目標として考えられることになります。
また、たとえば

じゃあ、やってて楽しいことってなんですか?

うーん、怪我する前はたまに野球を見に行ってたなぁ。
好きなんだよねぇ。
というように、話をしていき、どうすれば本人らしい生活を送ることができるようになるか、を見ていきます。
今回の場合、最後の目標を「家族と野球を見に行く」にしてもいいかもしれません。
さて、最終目標が「野球観戦」とします。
そうすると、退院するときには、以下のような能力が無いといけないことになりますね。
- 球場の手すりがない階段を登れるようになる
- 球場までの交通手段を問題なく乗り降りできる
- 移動や球場内での観戦をひっくるめて楽しめるだけの体力がある
作業療法士の思考ー面談後
これからは、
- 今の病院での生活をよいものにする
- 本人と立てた目標を達成する
といった2つの基準でリハビリ内容を考えていきます。
入院してリハビリできる期間は決まっているため、どの段階でどれぐらいまで達成できるか、を見極めます。
その結果、退院後もリハビリしないといけない見通しの場合は、その旨を、病院内で開かれる会議(カンファレンスといいます)にて、情報共有をしておくこともお仕事です。
作業療法士の思考ー入院中の問題分析
今回の患者が、
- 看護師の話を聞かずに口論になる
- ナースコールを押さず、まだ歩けないのに勝手に歩こうとする
- ものを散らかす
- 食事を取らない
などといった状況になることもあります。
また、リハビリ中に癇癪を起こしたり、帰りたい帰りたいと帰宅願望を強く言い始めたりすることもあるでしょう。
これらの問題が起こる場合、なぜ起こるのかを分析しないといけません。
そこで必要になってくるのが「認知症の知識」だったり、「心理的反応(心理学)」だったりします。
これらの知識は2年生後半から3年生で勉強しますよ!
作業療法士の思考ー退院時
患者さんが退院する場合にも、作業療法士のお仕事はあります。
- 使う歩行用具が適切か確認する
- 動いてはいけない方向ややり方を患者や家族、介護する人たちに指導
- 介護する人に力不足(老老介護や独居、家族が仕事で介護できない場合など)がある場合は、介護専門職のヘルパーや訪問リハビリ、デイサービスやデイケアなどのサービスで、状況に応じて必要なリハビリが受けられるよう調整する
作業療法士の思考(詳細解説)
作業療法士の思考ー「急性期」詳細解説
作業機能障害
入門編でご紹介した、急性期に作業療法士が考えることとして以下を挙げました。
- 自分で病室のなかで生活できるようになってもらうこと
- 生活リズムを整えること
- 自分のやりたいことが最低限叶うようにすること
これらは、専門用語でより詳しく説明すると、以下のようになります。
1ーADLの自立 医学的介入と作業的介入※注1(作業不均衡の改善)
このADLは、日常生活活動というのですが、詳しい内容や分析方法は2年生から3年生のはじめに習います。作業分析や工程分析といいます。
2ー作業機能障害のうち、作業不均衡の改善
朝昼に寝て、夜にずっと起きているといった昼夜逆転や、朝起きたら身支度をする、服を着替えるといった習慣、昼にダラダラ過ごしすぎるのではなく、適度な運動や決まった食事時間に食事を取るといったことまでを正していきます。これは学校では習わないのですが、作業療法士の基礎的な部分でありますので、卒業してすぐぐらいまでには知っていて欲しいです。

これに近い内容である、作業療法の歴史については1年生で習います。
3ー作業機能障害のうち、作業疎外と作業剥奪の改善
退屈は、1日の活動時間を奪いますし、心が病む原因になります。結果うつ病や認知症といった心の病気にかかりやすくなったり、体を動かさないので筋肉が痩せていき、体力がなくなります。そういった状況を作らないようにするためには、自発的に心と体を動かしてもらう必要があります。
※注1 補足
- 医学的介入ー他の専門職もやっている、医学界の当たり前を詰め込んだ治療方法
- 作業的介入ー作業療法士特有の介入方法。ベースは哲学。
上の記載は、作業機能障害モデルを理解しないと難しく聞こえるかもしれません。
※下の記事の「作業機能障害」の項で、作業機能障害について説明しています。
炎症(キズ)
キズの状態の管理については、以下のように説明しましたね!
- 血圧や酸素が足りているか
- キズが悪化していないか
- 血の中にいろんな情報があるので、採決結果を確認する
これをより詳細に専門用語を織り込んで説明してみます。
- バイタル管理(血圧や酸素が足りているか)
- 創部管理(傷が悪化していないか)
- 炎症マーカーの状態を確認(血の中にいろんな情報があるので、採決結果を確認すること)
炎症とは、キズのことです。
キズは体の表面にあり目に見えるものがまっ先にイメージされますが、じつは体の内部でもダメージを受けていることがあります。
体のキズを治すために、血液で必要なものを運搬するので、採血の結果を確認することは重要なのです。

これらは、3年生から4年生で習います。
詳しい内容は、なかなか学校では教えてくれないので、働き始めて先輩から教えてもらったり、自分で調べたりすることが多いです。
作業療法士の思考ーリハビリ開始 詳細解説
さて、この時点での着眼点として2つ挙げました!
- 自分で病院の中を動き、生活できるようにする
- 患者本人と面談をして、目標を決める
このうち、2の、「患者本人と面談をして、目標を決める」について補足していきます。
患者本人と面談をして、目標を決める
専門用語で説明すると、今回の面談は作業療法士の中では「面接」と呼んでいるものです。ここで、本人の話を聞き、生活歴や作業歴というものを聞いていきます。
生活歴というものは、本人がどのように生活してきたか、を聴くものです。
作業歴というものは、どんな役割を担ってきたか、どんな体験をしてきたか、を聴くもので、本人が大切だと感じているもの、作業療法士的には「価値ある作業」を聴きだすことが大切です。
そして、ここで出す最終目標というものは、病院内のリハビリのゴールではありません。
最終的には回復期→生活期に移っていくのですが、生活期でリハビリや支援を行なっていくことを前提に最終目標を立てます。
まとめ
ここまで見ていただいた皆さま、お疲れさまでした!
今回触れたのは、あくまで病院での作業療法士の働き方です。
他にも、役所で働いていたり、デイサービスやデイケアで働いていたり、精神科病院や発達の施設で働いていたりなどなど、さまざまな分野があるため、それに応じた知識を持っておく必要があります。
しかしながら、作業療法士の資格を取る上では病院での勤務を前提として学習しますし、国試をみても病院での作業療法士の働き方に準拠した問題が出されています。
すべての基礎として、ぜひ病院での作業療法をひと通り学んでみてくださいね。
長い記事でしたがここまで見ていただきありがとうございました!
以上、OTだみんでした!
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