お年寄りの心を考えてみようー老年期の喪失体験の話ー
こんにちは!OTだみんです。
私はデイサービスのOTとして現役で作業療法を行っていますので、日頃から高齢者の方と接する機会が多いです。
現場で高齢者の方を見ていると、無気力になっている方をしばしば見かけます。
これは、精神的、身体的廃用を招くので、健康上よくない兆候なのは言うまでもないことです。
では、どうして無気力になってしまうのでしょうか。
今回は、実際の私の体験談から、高齢者の心に寄り添って想像をはたらかせてみましょう。
高齢者の喪失体験
私の祖父の話
これは、私が高校生のときのことでした。
母の実家に行きました(中学校卒業して半年行ってなかったので久しぶりに行った、という感じですね)。
祖父母どちらも優しくしてくれて、仲は良かったです。
その日びっくりしたのが、
祖父が習慣であった朝の散歩を止めた
ということ。
8時ごろについたのですが、本来散歩の時間なのに祖父がいたのです。
……あれ?
「じいちゃん、散歩いかないの?」
「まぁねぇ、、、」
誤魔化されました。
今思うと、祖父はちょうどあの頃ガンを患って、体力が落ち始めた頃でした。
うちの爺やは、散歩のとき、パンの耳を持っていって、川にたくさん出るカモメになげて餌をあげるのが習慣になっていたようです。
しかし、できなくなりました。
その時の爺やの顔は凄く寂しそうでした。
その時の顔が衝撃だったのでしょうか、今でも思い出されます。
老年期の「喪失」に思いを馳せる
すこし想像の翼を広げていただくために、私の祖父のお話しをしました。
高齢者には、日常的に「喪失体験」がつきものです。
これは、ある程度若い世代にとっては想像が難しいことでもありますよね。
では、実際にどんな喪失体験が見受けられるのか、周囲の自分より上の世代の知人や家族、祖父母のことを思い浮かべながら想像していきましょう。
- 「親」という役割の喪失
- 「社会人」という役割の喪失
- 「身体の喪失」
- 「配偶者」「友人」の喪失
「親」という役割の喪失
「親」という役割の喪失は、早い方では、50代でも起こります。
子供が徐々に巣立っていき、今までの生活が一変します。
守るものが減り、習慣が変わります。
子供分の食事を作らなくても良くなる。
子供が一人で考え、行動することを遠くで見守る。
子供が一緒に生活しなくなります。
「社会人」という役割の喪失
次に起こるのは、社会人、つまり、仕事の喪失です。
仕事が消えると適度なストレスが消え、通勤から解放され、活動量が減ります。
仕事に使っていた時間が丸々消えるわけです。
必死に家族のためにお金を稼ぐという行為をしなくて済むようになります。
社会と関わらなくても過ごすことができるようになります。
「身体の喪失」
これは、体が老化が始まってしまい、以前の、知っている自分とは違う存在になっていきます。
腰が曲がり、膝に痛みがきて歩きにくくなったり、杖を使わないと歩けなくなったり、
遂には、人によっては車椅子を使うようになったり、などですね。
無論、皆さん、まずはショックが来ます。

「以前の自分じゃない。辛い。痛い。」
「もっと動けていたのに。」
スピードも遅くなり、人に迷惑をかけることが増える。
迷惑をたくさんかけると、本当に申し訳なくなり、不甲斐なくなったり、生きる気力が消えたりします。
鏡に写る自分を自分と認識することが怖く、辛く、不甲斐ない。
これは私が勝手に言っている話ではありません。
実際に話を聞くと、こうした答えがかなり多いです。
※骨折や切断、脳卒中による喪失と近いものがあると思っています。
「配偶者」「友人」の喪失
生活の潤いになっていた友人が亡くなると外出機会が減り、楽しみが減っていきます。
さらに、配偶者を喪失すると、
「妻」「夫」といった役割も消え、話し相手も減り、1人で生きるのに最低減の行動だけで済むようになります。

よくある軽口として、
妻や夫が自分の身内に対して
「あの人がいなくなったから楽になる」「居なくなればいいのに」
と言う方がいますが、いなくなった後に
「居なくなってよかった」なんて聞いたことがありません。
老年期に一人になること、一人暮らしになることは
「孤独感」
を誘発します。
この孤独感というのが厄介で、
「認知症発症」の誘因になります。
喪失体験を経験した方たちのその後
これらの「喪失」体験をした人々はどうなるのか
Fiskeらによるモデルによれば、
「老年期のうつは、加齢に伴う社会的役割の喪失(上記に記載されてあるものだ!)、ストレスフルな出来事に加えて自身の思考パターン、さらには認知機能低下などの健康状態の悪化により、日々の活動が制限され、本人にとって有意義な生活ができないことから発症し、その症状がさらに活動を制限させるという悪循環を示す」
としており、喪失体験が鬱病を誘発させる可能性があります。
また、アパシーという、「動機の障害」もあります。
これは、自発性・興味が低下し、感情が平板化する病気なんですが、簡単には
「意欲が上がらなくなる」
という病気だと思ってもらえればオッケーです。
つまり、
生きる意味を失い
やる気・意欲も失い
生きながらにして死んでいるように表情に輝きがない
こんな感じでしょうか。
ちょっと言い過ぎじゃない?
と思われるかもしれませんが、私は現場(デイサービス)で
「この問題どうにかしないとな」と切実に危惧しています。
まとめ
今回は高齢者になるにつれて増える喪失体験についてお話しました!
喪失体験とそれによる習慣や環境の変化により、うつ病や認知症が誘引されてしまう点で、これはけして軽視できない深刻な問題だと思います。
誰にでも訪れる喪失体験とどのように向き合い、乗り越えていくか。
喪失体験に苦しむ高齢者とどのように関わるか。
年齢を問わず、一度、考えてみてくださいね。
ここまで見ていただきありがとうございました。
以上、OTだみんでした!
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