セラピストに必要な「観察」とは?~観察の分類と実践する方法について~
こんにちは!OTだみんです。
セラピストに絶対的に必要な能力の一つとして「観察」という評価を行うことがあります。
これは、学校の中でも結構先生たちから言われたり、実習でやり方を教わり、実際にレポートに書いたこともあるかもしれません。
それでしょ?と思った方もいると思います。
ですが、実はそれでは不十分です。
なぜなら、「観察」の方法は2つあるためです!
今回はその「2つ」の観察方法について話していこうと思います。
この2つの観察方法を使いこなすことによって、セラピストとしても、仕事人としても一段階成長することができますよ。
では、さっそく見ていきましょう!
「観察」には2つの種類がある!
まず、列挙しますと
ADLやIADL、基本動作を「観察」し、どこに病巣があるのかを見る、いわゆる「状態観察」
と
人間の行動を元に、その人の思考や価値観、感情を汲み取り、その人間を「理解」するための観察、いわゆる「行動観察」
の2つがあります。
観察には2種類存在する!
- 「状態観察」…どこに病巣があるのかを見るため、ADLやIADL、基本動作を「観察」する
- 「行動観察」…その人間を「理解」するため、人間の行動を元に、その人の思考や価値観、感情を汲み取る
「観察」それぞれの違いとは
状態観察
先の「状態観察」は、セラピストや医師・看護師や柔道整復師、スポーツトレーナーなどが行っています。
これは、基本的には
「今の悪いところ」を見つけ、「何が原因なのか」を観察で「あたり」をつける、という技術です。
経験年数が増えてくると、頭の中でのモデルがかなり多くなってくるので、なんとなく方程式が組み上がっています。
その方程式に数値を代入するだけの作業なので、そこまで思考力を使わずに、正解に辿り着くことができます。
実習で使えるよう、やり方を教えて欲しい方がおられますか?
わかりました!
では、やり方と鍛える方法をお教えいたしましょう!
状態観察のやり方
では、やり方です。
まずは、「姿勢」を見ましょう。
一般的に習う、正常な姿勢を、多くの人間はとっていません。
猫背が多く、首が屈んでいる人もいるし、膝が曲がって歩いている人や、片足を庇っている人もいる。
いろんな人がいますよね。
パッと出てこない場合、両親や友達のことを思い出すといいかもしれません。

なんか、変だぞ?
これが1歩目です。
この1歩目を踏み出すことができるアンテナがあるかどうかで、「専門家」であるか「一般人」であるのかが分かれます。
変だぞ?と思ったら、
「どこが変なのか」を明確に言葉にできるようにします。
上記のように、腰が曲がっているから、首に過剰な緊張が入っている、肩が上がりにくいなど、明確に言葉にするのです。
これは、医療用語にする必要はまだありません。
まずは、明確に言葉にします。
そして、どうしてそこがおかしいのか、を自分なりに考えていく段階にいきます。
ここで医療用語に変換していき、思考していきます。
例えば、利き手側の肩が上がりにくい。物を片手で取ろうとして、苦労している。のであれば、
どうして肩が上がらないのかを考えていきます。
肩に異常が起きているのは、
- 疼痛が原因?
- そもそも肩関節屈曲や外転の関節可動域が足りないのだろうか。
- 骨盤をうまく誘導できていない?
- 利き手側に体重誘導ができないのだろうか。
このように頭の中でその人に関する「疑問」=臨床疑問を頭のなかに貯めておきます。
もしかすると、肩のインピンジメント徴候のせいで疼痛が発生、かつ自動可動域の低下があり、片手を使わないようにしているのかもしれませんし、
腰背部の伸長性低下に伴い、肩は上がりにくくなっている可能性もあります。
肩ではなく、頸部や鎖骨の可動性の低下や神経的要因が原因になっている可能性もありますよね?
たくさん臨床疑問が出てきたところで、他の状況も観察してみましょう。
普通に歩いている時には、やや円背で歩いているが、膝はそこまで曲がっていない。首の動き方もすごく悪いようには見えない。
歩く様子も、比較的正常歩行に近いような気がする。
となると、肩単体のせいか、脳関連なのかもしれない。
ここまで観察評価を行うことで、次のステージに行きます。
例えば、カルテがあるのであれば、既往歴や病名を見たり、本人に痛みや生活の中でどんな場面で困難感があるか、
あとは整形外科的テストをやってみてもいいかもしれません。
はい、ここまでの観察から評価までの流れが一般セラピストの頭の中で行われています。
この観察が「状態観察」です。
状態観察をする能力を鍛える
ではこの「状態観察」をうまくできるようになるためにはどうしたらいいのでしょう。
これは2つ方法があります。
- なんで?どうして?と毎回問いてくる、3歳児を頭のなかに飼う
- 疾患や身体機能、精神機能に対する知識を深める
1はその名の通り、どうしてそのようになっているのか、と自分で問い続けることです。
物事には必ず理由があります。
その理由を答えることができ、どのように今の事象につながっているかを説明することができるようになって初めて「専門家」として1人前です。
その「理由」の知識量を増やすためには、2で知識の引き出しを増やしていく必要があります。
知識が全くない状況では、「理由」はさすがに考え付きません。
また、知識が古く、間違っている可能性もあります。その場合、間違ったアセスメントになってしまう恐れがあります。
これは、専門家としては「失態」です。
常に「アップデート」し続け、ちゃんと使える道具=知識にしておく必要があります。
錆びた刀では相手を倒せません。常に研ぎ続けるのです。
行動観察
では、もう一方の「行動観察」はどんな物なのでしょうか。
この「行動観察」というものは、「状態観察」とは明確に異なります。
「行動観察」を身につけることができれば、「仕事ができる人」になります。
なぜなら、人の「感情」や「思考」を「行動」から評価するという物で、
その人が何を欲しているか、
その人の状態が変化しているかどうか、違和感を見逃さなかったり、
さらに言えば、そこまで理解していれば、自分の手の上で転がすこともできます笑
誘導ってことですね。言い方が悪かった笑
また、行動観察ができるようになれば、全てに応用が効くようになります。
仕事を覚えるときにも役に立ちますし、言葉を喋ることができない人への評価にも応用できます。
すごいな、それ教えてよ?って言いましたか?!
はいはい、ではやりましょうか!
行動観察を考える上での前提
まずは理論から。
先ほどの状態観察は、いわば「思考を深く深く」「長考する」といったところが正しいと思います。
〇〇という事象はどうしておこったのだろうか。原因は何だろうか。一つ一つを評価し、可能性をつぶしていき、最終的にGOALにたどり着く。
つまり、
状態観察=原因分析=論理的思考
なのです。すべてが論理的につながっており、跳躍しない。
仮に思考過程で跳躍していたとしても、それは今までの近しい思考の経験から、自明である理論、必ず正しいと思われる理論を軸にしているため、その理論の部分の整合性・論理性を「省略」したにすぎないのです。
難しい?なら、今の話は飛ばしてください。そこまで必要ではないです。
すべての思考に意味があり、論理性があり、つながっている。それが、「状態観察」
一方、「行動観察」は、論理などはあまり考えません。
原因と結果のセットをなんとなくでいいので暗記しておき、Aという行動をしたときに取りうる可能性の高い次の行動に対し、対処する、といったところです。
簡単に言えば、
自宅に帰った配偶者がいつも帰宅直後お風呂に入りたがることを覚えていれば、
「ただいま」
「お風呂掃除してあるけど、もう沸かす?」
「あ、いいね、沸かして」
という会話になるわけです。
これは、「毎日100%必ずお風呂に入りたい人」という存在はほぼありえませんが、「高い確率」でお風呂に入りたがるため、対策を講じた、ということになります。
この「確率」を頭のなかで考えておくこと、経験値として獲得しておくこと、これこそ「行動観察」です。
ちなみに、この思考法のことを「ベイズ式思考法」といいます。

行動観察のやり方
では、どう観察していくのでしょうか。
見るべきポイントは
行為―行動に一貫性・同一性があるか、です。
1.時系列順に頭の中に入れる。
私は頭の中のカメラで連写or撮影します。しかし、画像優位者ばかりではないことも理解しています。その場合、覚えておけないならメモしてもいいと思います。
2.行動のトリガーを覚える→原因を考察する
行動には先行刺激がかならずあります。そして思考が存在しています。
例えば、レジ前でカバンごそごそしているとき、貴方ならどう思いますか??
「財布」がないのかな?探している?と思いませんか?
環境や状況から、どうしてその行動をとっているのか、原因を考察しましょう。
ここは深く考察すると「状態観察」になります。あくまで直観に任せて、「私だったらこうかも」で構いません。
3.反復するかどうかを確認する
ここが「行動観察」の本懐です。レジに来ると毎回同じことをするかどうか、です。
毎回財布を探すのであれば、レジにつく→財布を探す という行動をとる可能性が高くなります。
ですので、身内の場合、レジに並んでいるときに「財布先に探して出しておいたら?」と指示ができます。
一方、ごくまれに財布を探す場合、とっている行動が「レア」なので、次回以降も財布を探すとは思えません。ですので行動に移さなくていい。となります。
感情―ある時間、ある刺激をうけたときの反応の仕方に同一性があるかどうか
感情に関しては、先ほどの「行為」と最後の部分が違うだけです。
Aという行動の結果、怒るのか、笑うのか、感情の部分を頭に入れておくのです。
そして、その原因A→感情が繰り返すかどうかを見ておきます。
繰り返すのであれば、Aはその人にとって不快・もしくは怒るトリガーです。
なるべく遠ざける。Aという行動をとらざるを得ない場合、逆にその人が安心する、快感情を引き出す可能性が高い行動ができるように準備しておく、といったところでしょうか。
目線―どの程度同じものをみているか、目のしかめ方や表情の変化は?
目は口ほどにものをいう、と言われています。
次の行動をするサインだったり、興味や関心があったり、眼力が強い・眉をひそめている場合は「警戒」「不快」と感じていたりと、さまざまな情報をとることができます。
つまり、目線を見ておけば、次の行動の予兆を感じることができるのです。
喧嘩をするときに笑顔で向かい合う人がいるでしょうか。必ず怖い顔をしています。
赤ちゃんを見るときに目を見開く人がいるでしょうか。(いるかもしれませんが、、、)ほとんどは優しい目線を赤ちゃんに向けるでしょう。
「行動」「感情」「目線」というところがキーワードです。これらの経験値を貯めておくことで行動を予測でき、対処が早くなります。そして、ためた経験値は最終的に「直観」に化けます。思考を伴わなくなるのです。
行動観察のわかりやすい教材はアニメ!?
実例として、
「ハイキュー」のアニメで、主人公の日向が一年生合宿で試行錯誤する描写が参考になります。
この中では、主人公が「他者がどうしてその行動をとるのか考える」「他者の行動や技術を試してみる」「予測してみて、間違っていたら修正する」といった、先述の「観察」をしています。
そして、最終的には日本代表になるまで成長していきます。(ネタばれになってしまった、、、)
その人の傾向を頭に入れて対策をすること→「行動観察」
技術を盗むこと→「状態観察」+「行動観察」
と日向は行っています。
これは、どの世界でも通用します。スポーツの中だけではなく、皆さんの職場や学校でも応用可能です。
ぜひ、この「状態観察」「行動観察」を使いこなしてほしい!!と思っております。
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