【真・作業療法入門】作業モデル概論
こんにちは!OTだみんです。
当ブログでは、作業療法の本当の価値を発揮するために、「作業モデル」や「作業」について勉強してほしい!と繰り返し申し上げてきました。
しかし、勉強しようにも意外とネットで作業モデルの総論を見かけないですよね。
ですので、今回は作業モデルを全くわからないという立場の方に、学習の地図として使っていただけるような入門記事を書きました!
あくまで概論として、作業学を俯瞰して全体像をつかむための記載をしていこうと思います。
また、さらに各項目を深掘りして詳しく知りたい方のために、参考書のリンクを貼り付けました!
ご興味が湧いた方は、ぜひそちらも読んでみてくださいね!
では、さっそく見ていきましょう!
作業モデルの理論の位置づけ
作業モデルの包含関係
作業モデルの理論は、おおまかに以下のようなレイヤに分かれています。
- 大前提
- 大集合
- 中集合
- 小集合
おおまかに図示すると、以下のような図になります。

さらにそこからいろんな枝葉に分かれているため、初学者には複雑です。

初心者
なんか色々あって難しい!?
どれから手をつけたらいいのかわからない!!
各理論の関係性って…?
そこで、このブログでは、最低限触って欲しい
大前提(作業機能障害モデル) と 大集合(人間作業モデル・作業科学)
の理論を触っていこうと思います。
また、あくまで初心者・初学者のために細部の正確性よりもわかりやすさを優先して分類しています。
細かく正確に分類されているものを読みたい!と思う場合、この記事を読んでから、
「作業療法理論の教科書」
をお読みください!
各理論がどのような流れで発展してきたかがわかりやすくまとまっている、名著です。
では、まずは大前提の解説から始めてまいります。
大前提ー作業機能障害モデル
これは、どんな作業療法士でも、この考え方をベースにしていると言われています。
京極真先生が出した本「非構成的評価トレーニング 4条件メソッド」や、京極真先生の修士論文の中で紹介、証明されています。
これは、
人間は経験(≒作業)によって構成されている。
本人が経験したい「経験」がそのままのかたちで経験できずに歪んでしまう状態が作業機能障害ですね。
「経験」は、基本的には「休息」「仕事」「日常生活活動」「余暇活動」のどこかに属すると言われています。
作業機能障害は、
- 作業不均衡 生活のバランスが崩れている、先に挙げた4つのうち、どれかに偏ってしまっている
- 作業疎外 意味がないと思っている経験ばかりしている
- 作業剥奪 やりたい経験のための道具や能力がない
- 作業終焉化 人のせいで経験ができない
といった感じです。
詳しく勉強したい方は是非京極先生の本を読んでくださいね!
対象
作業機能障害を抱えた人全て
つまり、全人類の悩み全てに適応可である可能性あり。

作業モデルは疾患に応じた介入ではなく、その人の作業機能障害へ介入していきます。
ちなみに疾患に応じた介入は「医学モデル」という話になりますので、別の話ですし、作業療法固有のものでもありませんので、注意してください。
評価方法
CAODという評価方法が先駆者の京極先生から発表されています。
ですが、先に述べた「作業不均衡」「作業疎外」「作業剥奪」「作業周縁化」が頭の中で捉えられていれば、構成的評価を必ずしも使わないといけない、ということではありません。
観察評価(非構成的評価)、つまり、
「00と本人は言っている。1日の中では△△といった行動をしている。「作業不均衡がある」と考える」
のように記述する、であってもいいです。
介入方法
今後あなたが勉強する作業モデル全般的に言えることなんですが、基本的には作業モデルは「個別性」が高くなります。
医学モデルとは異なり、この症状はこれを行う、というものがありません。
そのため、先に書いた「」に引っかかったら、それを改善するように介入する、といった感じになります。
数値化したいのであれば、「生活行為向上マネジメント」をご使用いただければ、と思います。
この生活行為向上マネジメントについては、以下の記事で解説しています!
「生活行為聞き取りシート」と「生活行為向上マネジメントシート」を上手に使うことができれば、やっていることを数値化・見える化することができますよ。
大集合ー人間作業モデル・作業科学
作業機能障害をより分類して、わかりやすい形にしよう、専門的に深く原因を追っていこうとしたのが大集合です。
この大集合には、
- 人間作業モデル
- 作業科学
があります。
基本的に初学者はこの2つを知っていればOKです。
ちょっとでもいろんなモデルを聞いたことがある人は、「CI療法は違うの?」「OBPは?」と思われると思います。
本当はそれらも作業療法理論であり、大事なのはその通りなのですが、今回はあくまで初学者向けの記事なので、記載しません。ご了承ください。
作業療法の理論や作業学についてより理解を深めたい場合は、ぜひ「作業療法理論の教科書」をお読みください。
人間作業モデル
これは、人間の作業、つまり経験が「人間」「環境」「作業」の3つで構成されている、と考えます。
作業(すべての経験)=「人間」×「環境」×「作業」
「人間」のなかに「意志」「習慣化」や能力があり、「環境」のなかに「人的」「物的」「社会的」、「作業」の中に「主観的経験」「客観的経験」(2つを合わせて「遂行機能」という)がある。
今あげた「」の中の物を全て評価し、その人を理解すること、それが人間作業モデル、といっても差し支えないです。
図示すると以下のような概念です。

対象
これも、作業機能障害と同様です。
疾患関係なく、上の評価項目で問題が起こった全ての人という感じです。
この中の評価内容は、作業機能障害に準ずるところがあり、それに伴い内容も似通っています。
作業機能障害を詳しく分類したものが人間作業モデル、という認識で構いませんし、実は国家試験でも問われ始めているものでもありますので、皆さん概要は知っていて欲しいのです。
評価方法
固定の評価としては、MOHOSTなど様々な評価ツールがあります。人間作業モデル、と打って検索してもらえると、いっぱいのツールが出てくると思います!
、、、ただ、有料です。無料のものはありません。残念。
作業科学
最後に作業科学です。この作業科学は、作業=経験の質を研究する、考えるという学問になります。
人間作業モデルが、「広く介入していこうとする」ならば、作業科学は、「一つを掘り下げようとする」という違いになります。
- 人間作業モデル…作業の量をみる
- 作業科学…作業の質をみる
というイメージで構いません。
作業科学は、その経験の「意味」や「形態」を追っていきます。
意味では、「社会的役割」や「習慣」といったものや、その作業の「価値」「歴史」「文化」など。
形態では、「時間帯」「かかる時間」「どこでするか」「誰とするか」などになります。
固定の評価は特になく、本人が思っていることを面接で深く聞くことが大切だと言われています。
※作業面接については、以下の記事で詳しく解説しています。面接の重要性を理解して、作業モデルの実践に生かすため、ぜひご一読くださいね!
介入方法としても、決まった形式はなく、クライアントが大切にしている経験、活動ができるように、作業療法士が考慮しながらプログラムを組んでいく、といった形になってくると思われます。
まとめ
今回は、大枠3つの理論、作業モデルを紹介しました。
皆さんが知っている一般的なリハビリ、医学モデルとは雰囲気が違ったと思います。
1番の大きな違いは、「疾患を見るのではなく、人を見る」という観点です。
そして、人を見るときに具体的に見ていくのはその人の「作業」(=全ての経験)になる、というところでしょう。
疾患があるからイコール不幸、ではなく、人生の目的を達成する時に邪魔をする存在として疾患がある、といった考え方が、作業機能障害モデルという大前提の核になるものだと思います。
詳しく知りたい方は、本文中でもご紹介した「作業療法理論の教科書」や「作業療法実践の理論」をぜひお読みください!
では、読んでくださった皆さま、お疲れさまでした!
以上、OTだみんでした!
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