予後予測&退院時期選定をマスターしよう!
こんにちは!OTだみんです。
私が現場の作業療法士として働いてきてよく耳にする声に、
「予後予測ってどうしたらいいの??」というものがあります。
でも現状、これは戸惑っても仕方ないのです。
なぜなら…
- 学生時代・新人時代にかけて、この部分はあまり勉強しない
- 国試でも、評価ツールの名前しか出てこない程度
という現状があるからです。
しかしながら、予後予測ができないと現場では使い物にならないレベルだ、というのもまた現実です。
なぜなら予後予測ができないと…
- 評価介入の目標設定ができない
- 退院可能時期の予測ができない
- 福祉用具の導入や、介護保険申請、ケアマネへのケアプラン・ケア会議の設定依頼(多職種連携)ができない
などなど、できないことづくしになってしまうのです。

こう見ると、改めて教育と現場での実践にものすごいギャップがありますよね…
そこで今回は、「予後予測の基礎」と「退院時期の選定の基礎」の話をしていこうと思います。
特に、新人さんや学生さんはこの部分を理解しておくと、レポートを書く際や、日々の臨床の中での目標設定が楽になりますよ!
※あくまで身障領域のお話しをしていきます、そのまま精神や発達領域に応用できるわけではないのでご留意ください
では、見ていきましょう!
予後予測の基礎ー大前提
予後予測をするうえで、認識しておかなければならないことがあります。
それは
大前提)病気をする前のレベル(病前ADL)は超えない
ということです。
簡単にいうと、
寝たきりの利用者がリハビリの結果、杖歩行になるとは考えにくい
ということです。
たしかに、ケースによっては100%無理ではないかもしれません。可能ではあるかもしれません。
ただ、限りなく可能性は低く、介入手段を間違えてしまったら最後、2度とたどり着かないでしょう。
ですので予後予測の基本的な原則として、上記を前提に考えていくようにしましょう。
予後予測の基礎ー症例別
骨折系
下肢
予後予測
基本的には、70歳代までは大体ADLレベルが病前の水準まで戻ります。
ただし、骨折形が複雑でない場合です。
大きく損傷して、複雑骨折になっている場合、なかなか元に戻すまで時間がかかり、退院時にはADLが戻っていないこともあります。
その場合は、通院しながらリハビリを受けてもらい、復帰を目指すという感じになりますね。
一方、高齢になってくると、ADLはそこまで大きく回復しない場合があります。
リハビリを拒否したり、抵抗したりするとどんどん治る時間が長くなっていきます。
フレイルが加速して、回復が遅くなったりもします。
また、糖尿病や心疾患など基礎疾患を持っていると更に更に遅れていきます。
※フレイルについて知りたい方は、ぜひこの記事もご一読ください!
このように、高齢になるとさまざまな要因によって、回復が遅れてきます。
よって、以前より1つレベルが下がることを想定して介入しないといけません。
さらに骨折形が複雑になると、歩行自立にすること自体が難しい可能性があります。
ですが、基本は★ADLレベルが一つ下に下がる、ということを覚えておいてください。
退院時期の選定
退院時期の選定についてですが、若者は基本的には杖移行の自立項目が退院時目標になることが多いです。
仕事や学校をどれぐらい休むことができるか、スポーツの有無や仕事内容にも関わってきます。
例えば、40代専業主婦、20代学生、30代会社員、20代スポーツ選手でみんな退院時期が異なる場合があります。
専業主婦の場合、家族のヘルプが見込める場合、どこかしらの自立が取れれば帰るのが早いかもしれません。
しかし、親戚が遠方だったり、家に帰るのに家事などのIADLが必須の場合、やや長く入院して、IADL訓練をクリアしてから退院するかもしれません。
次に、高齢者なんですが、これは受け入れ先がどのように言っているか、によって変わります。
例えば、施設入所でも、サ高住の場合は「ADLがどの段階でも自立していることが必須」というところがありますし、老人ホームやグループホームの場合「どんなレベルでも骨折が治っていればいい」という場所もあります。
自宅退院の場合も、家族がどこまでを求めているかによって変わります。
介護は「半年から1年しっかりやるから早めに返して欲しい」というのならば、自宅内歩行が車椅子ではなくなった場合に返す時もあります。
「自分のことはしっかりやれるようにしてほしい」のであれば、入院期間制限いっぱいにリハビリして退院させるかもしれません。
そのため、退院先のことをMSWに聞くことが必須です。
どういうように求められているか、でリハビリをどの程度の期間やらないといけないか、が変わってきますから。
骨折(下肢)まとめ
- 若い人は杖より上の状態まではADLを獲得する人が多い。
- 高齢者は目標のADLレベルを病前のレベルを1つ、骨折形によっては2つ下げる必要がある。(でないと期間内にリハビリが終わらない)
- 退院時期は、若い人でも高齢者でも、退院先の要求レベルに達する必要がある。
後述にcoldwellの表を出しているので、参考にしてください。
★補足ーADLレベルについて
ADLレベルとは、基本的には、歩行形態のことです。
歩行形態も、自宅内なのか、自宅外なのかで変わる人もいます。
例えば、家の中は伝い歩きでいいですが、外では伝い歩きできないので、シルバーカーを使うなどなど。
レベルとして、低い方から
- 寝たきり
- 車椅子介助
- 車椅子自走
- 馬蹄式歩行器介助ー前腕支持歩行器介助ーキャスター付き歩行器介助ー固定式歩行器介助
- 馬蹄式歩行器自立ー前腕支持歩行器自立ーキャスター付き歩行器自立ー固定式歩行器自立
- シルバーカー歩行介助ー自宅内上記4つどれか
- シルバーカー歩行自立ー自宅内伝い歩き
- 杖歩行介助ー自宅内伝い歩き
- 杖歩行自立(松葉杖)ー自宅内伝い歩き(松葉杖)※松葉杖は60代までかなぁ
- 杖は持つだけ歩行ー自宅内独歩
- 屋外独歩ー自宅内独歩
これを概観として頭に入れておきましょう!
上肢
予後予測
上司の場合、ADLは老年期でも、若者でもあまり関係ありません。
基本的にはADLは以前のものに戻ります。
しかし、骨折管理をミスしてしまうと問題があります。
患部外の訓練や皮膚・創部(手術した傷)の伸長性にダメージがあると肩が上がりにくく、かつ場合によっては疼痛がするようになります。
三角巾などの固定をしっかり正しく行い、浮腫への介入・管理を本当に怠ってはいけません。
退院時期の選定
基本的には、下肢と同じなんですが、下肢と違う点は
「若い人は下手をすると1wとか2wで帰る」というところ。
下肢とは違い、体重がかかる場面が少ないのです。
固定をしっかりと守ることができる!と判断されれば1wで帰れます。
逆に、「禁忌」を守れない可能性がある人は、骨癒合するまで入院が必要、ということです。
「禁忌」を守れない可能性がある人、とは具体的には認知症などの精神機能に問題を抱えている人が例としてあげられます(指導を守れない可能性があるため)。
骨折(上肢)まとめ
- ADLは浮腫管理+創部管理+患部以外の機能を落とさないこと で決まる。
基本的には以前のADLに戻ることができる。 - 退院時期については、「禁忌」を守ることができるかどうかで判断できる。
認知症などの精神疾患が影響しそうな場合は骨癒合まで待つ必要がある。
→認知機能評価やうつ病評価などの精神機能を見ておく必要がある。
★補足(資料)coldwellの骨折の癒合日数
coldwellの骨折の癒合日数(保存療法の場合の表なのでOPEした場合は参考程度に)
→受傷からの日数 | 仮骨形成 | 癒合 | 機能回復 |
指 | 2〜3w | 3〜6w | 6w |
中手骨 | 2〜3w | 3〜6w | 6w |
中足骨 | 2〜3w | 3〜6w | 6w |
橈骨/尺骨 骨幹部 | 3w | 6〜8w | 10〜12w |
橈骨/尺骨 肘関節内 | 3w | 5w | 12〜14w |
橈骨/尺骨 手関節内 | 3w | 6w | 7〜8w |
上腕骨 下端部 | 2〜4w | 6w | 8w |
上腕骨 骨幹部 | 2〜4w | 6w | 8w |
上腕骨 上端部 | 2〜4w | 6w | 8〜12w |
骨盤 | 4w | 8w | 8〜16w |
大腿骨 頸部 | 12w | 24w | 60w |
大腿骨 転子部 | 4w | 12w | 16w |
大腿骨 骨幹部 | 6w | 12w | 14w |
大腿骨 顆上部 | 6w | 12w | 14w |
膝蓋骨 | 6w | 6w | 6〜12w |
脛骨/腓骨 膝関節内 | 6w | 6w | 14w |
脛骨/腓骨 骨幹部 | 4w | 6w | 12w |
脛骨/腓骨 足関節内 | 6w | 6w | 12w |
踵骨 | 6w | 8w | 12〜14w |
脳卒中
脳卒中
予後予測
脳卒中については正直かなり予後予測が難しいです。
まず間違って欲しくないのは、「プラトー」という言葉の意味です。
多くの人が勘違いをしていますが、このプラトーという言葉は、あくまで「自己回復機能、自然回復での限界点」と認識してください。
脳梗塞は基本的には6ヶ月でプラトーを迎えると言われています。
プラトーと言われたあとも、正しい知識とともに介入・自主トレをしていけば、実は脳卒中は回復していきます。
正確には、
脳の機能そのものが回復する→プラトー
脳が失った機能を代償する→プラトーより先
という形です。
ですので、6ヶ月までの回復というのは特に大事であることは変わりませんが、正しい脳卒中介入にてまだまだ改善する!ということです。
まず、受傷から2w以内に予後予測のテストを行うことが最良と言われています。
それによってどのレベルまで歩行が回復するかを予測できます。
1ヶ月でもできるのですが、できるだけ2wでの評価をお勧めされています。
あとは疾患部位からも想定できます。
被殻や淡蒼球、視床に病巣がかかっているかどうか
を確認します。
この3つにかかっている場合、高次脳機能障害(脱抑制・感覚障害など)が合併し、純粋な運動麻痺への介入では不十分になり、自立歩行に多大な影響を与えることになります。
ですので、脳画像を確認するといいでしょう。
退院時期の選定
退院時に関しては、上の骨折と基本的な考えは一緒ですが、ここに装具が入るかどうかがあります。
※装具については、脳卒中介入の基本を別の記事で詳しく書く中でお話ししようと思います。
脳卒中の特徴として、「歩行器が使いにくい」という点があります。
歩行器は基本的には「両方の上肢で体幹と足をサポートするため」の器具です。
今回の場合、上肢を含めて片側が×になっているため、片側の動きをサポートするものでなければいけません。
ADLレベルは、歩行器が使えないので基本的に杖になります。
- 寝たきり
- 車椅子介助
- 車椅子自走
- 4点杖歩行
- 杖歩行介助
- 杖は持つだけ歩行ー自宅内独歩
- 屋外独歩ー自宅内独歩
脳卒中まとめ
- 脳卒中は予後予測が難しい。
- 「プラトー」は「自然回復での限界」であり、介入を続ければさらに回復することもある。
- 予後予測のテストを2w時点で行う。
- 疾患部位によって予測が変化するので脳画像を確認する。
- 脳卒中の場合は片側の上肢が麻痺してしまうので歩行器ではなく杖がメインになる。
★補足ー予後予測のテストを実践してみよう
このADLレベルの測定は、二木の分類、石神の分類と坂本の分類があります。
それらを総合して、坂本の分類に二木の分類の一部分を追加したもので表を作りましたので、ぜひ参考にしてください。
まず、安静座位をベッド上でできるかどうかで判断します。
初回だけ特殊で、約10日以内で安静座位15秒可能レベルを獲得した時に測る、としています。
初回▼
ADL能力 | 歩行予測 |
安静座位15秒可能で、座位にて患側でkicking(抵抗はなし)を、膝完全伸展位まで行える | 自立歩行可能(1ヶ月以内で自立) |
食事/尿意の訴え/寝返りのうち2つを自分で行える か Br.Ⅳ以上(二木) | 自立歩行可能(2ヶ月以内で自立) |
安静座位15秒可能で、座位にて患側でkicking(抵抗はなし)を、非麻痺側の助けを借りて膝最終伸展位まで行える。(バランスが崩れない) | 自立歩行可能可能性高い |
安静座位15秒可能だけどkickingはどう頑張っても不可能 | 不明 |
安静座位15秒不可 | 自立歩行不能可能性 |
2w▼
ADL能力 | 歩行予測 |
安静座位15秒可能で、座位にて患側でkicking(抵抗はなし)を、膝完全伸展位まで行える | 自立歩行可能(2ヶ月以内で自立) |
安静座位15秒可能で、座位にて患側でkicking(抵抗はなし)を、非麻痺側の助けを借りて膝最終伸展位まで行える。(バランスが崩れない) | 自立歩行可能可能性あり |
安静座位15秒可能だけどkickingはどう頑張っても不可能 | 不明 |
安静座位15秒不可 | 自立歩行不能 |
1M▼
※1Mは二木の分類の方が精度が高いため、二木と坂本の分類を参考にして記載する
ADL能力 | 歩行予測 |
安静座位15秒可能で、座位にて患側でkicking(抵抗はなし)を、膝完全伸展位まで行える(坂本) | 自立歩行可能(3ヶ月以内で自立) |
介助なしで起居・座位保持可能(二木) | 自立歩行可能(3ヶ月以内で自立) |
安静座位15秒不可 | 自立歩行不能可能性高い |
まとめ
今回は、予後予測と退院時期選定を行えるようになるための基礎を解説してきました!
学校では実践レベルまで教えてくれない割に、現場では超重要な予後予測。
OTだみんがプリセプターだったらこう教えるな~と思いながら書きましたので、作業療法士の新人さんや学生さんはぜひ、何度か読み返して一人前の作業療法士として活躍してくださいね!
ここまで見ていただきありがとうございました!
以上、OTだみんでした!
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