大腿骨頸部骨折・急性期リハ解説!【バイザー指導形式】
こんにちは!OTだみんです。
学生さんや新人さんのよくある悩みとして、
「明日レポート提出しろと言われたけど、本持ってない」
「臨床に活かすために本を買いたいけれど、お金がないのでなかなか買えない」
ということがあると思います。
疾患について学ぶには、本を読んで勉強することが一番だというのは確かですが、ハードルが高いのも確かです。
そこで、本を読んで勉強する前段階として、大まかな評価介入方法を症例別に解説できないかと考えました。
この記事では、実際に私、OTだみんがバイザー、もしくはプリセプターとして、一症例を学生と一緒に考えていく、といった記事にしていこうと思います。
また、末尾に参考図書を付記しておきますので、本で学習できる機会がありましたらぜひ勉強してください。
では、さっそく始めましょう!
登場人物

バイザーとして解説していきます!

症例に対する介入について、一緒に学んでいきます!
大腿骨頸部骨折・急性期リハ解説
大腿骨頸部骨折・急性期リハ解説の前提事項
今回の解説の前提として、以下の点を踏まえた上でお読みください!
- 初めての症例を持つ作業療法学生(OTS)に指導する
- 評価介入の流れはトップダウン式でおこなう
- 作業モデルと医療モデルの両刀でおこなう
大腿骨頸部骨折・急性期のリハビリ介入の流れ
症例と初回介入のポイントとは?
A氏 85歳 女性
6月1日夜中に自宅内で転倒。起き上がれず救急搬送。
右大腿骨頸部骨折と診断。当日ハンソンピンを使用して骨接合実施。

情報はここまで。
実際には今6月20日なので、病状は変化しているわけですが、もし、翌日か当日の初回介入を任された場合、どうしますか?

なにを評価するか、ってことですか?

学生であるときには、評価と介入の時間を分けて考えてもいいんですが、実際の臨床では、評価と介入は同時に行なっていきます。
その中でも、必ず間違えてはいけないポイントだけは必ずあるので、そこだけはミスしないでやっていきます。
では、初回介入時にミスしてはいけないポイントはなんでしょうか。

なんでしょう、、、
ROMをはかる、とかでしょうか。

確かに、手術成績を評価するためのROM評価、介入は必要です。
しかし、それよりも大切なことがあります。

なんでしょう、、、
バイタル、とかですか?

間違ってはないですよ。自信持って!
初回介入のポイントは、以下です。
- 安静度の確認
- 車椅子で生活できるようになるか
- 家族や本人からの情報聴取
ポイント1:安静度の確認

安静度はDrに確認します。
リハビリテーション指示書に書いてある場合はそれに従います。
えっと、この症例は、、、
これです。

えっと、疼痛に応じて全荷重可能?

そうですね。なので、本人の痛みの訴えだけに気をつけておきます。
ちなみに、頸部骨折のopeではなかなかないのですが、免荷重が支持される場合もあります。
ポイント2:車椅子で生活できるようになるか

次に確認するのが、術前と術後の画像、手術経過が書いてある書類です。
画像にて骨折形を確認しておくこと、手術後に骨折線がどのようになっているか、をみておくことが大事です。
これは、疼痛が長引くかどうかだったり、ハンソンピンという選択が苦渋の決断だったのか、適当なのかをみれます。


この症例の場合は、適当でありました。ガーデンstageⅢでした。
手術経過で必要なことは、どこを切除、分け入ってopeしたか、です。
大腿骨頸部骨折の場合、基本的には臀筋を切る、分け入ることが多いのですが、ドクターによってどこからやるかが違いますので注意です。
今回の症例の場合、どうですか?

はい、臀筋からです。
大臀筋を避けて、中臀筋を切ったと書いてます。

ということは、どういうことが想定できますか?

えっと、臀筋の筋がつきにくい?

そうですね。
くわえて、臀筋の動きを代償しやすいということもありますね。
最終的に臀筋をしっかりと介入しないと、動きが左右対象にならないかもしれない、ということです。
自動ROM時に疼痛誘発につながるかもしれません。

なるほど!

2の車椅子にて生活できるか、というところに入っていきます。
はじめに答えてくれたように、バイタルサインはすごく大事です。
なぜなら、術後起居した段階で血圧が極端に上がる、もしくは下がるようだったら、
- 負荷が強すぎる
- 全身状態が悪い
という可能性があります。
ですので、介入の最初時にベッドからゆっくり「ギャッチアップ」をしてみて血圧を測っていきます。

ギャッチアップってなんですか?

ギャッチアップとは、カルテでG-UPとか書かれたりします。
ベッドの角度を徐々に90度に上げていくことを指します。
大体0度、30度、60度、90度と上げていき、それぞれでバイタルを測っていきます。


90度、つまりベッド端座位までいければ、次は車椅子移乗です。
車椅子に移乗した後、
- 疼痛
- バイタル
を確認しておきましょうね。
後は、部屋持ちナースに車椅子に移乗した時間を伝えておいて、どれだけ耐えることができるかを見ておくことが大切です。
1日の中で座る時間をどの程度にするか、の指標になりますし、短すぎると、食事ができないという恐れがあります。
※その場合、ベッドにオーバーテーブルを持ってきて、ギャッチアップ60度で取ることが良いでしょう。ナースにもそのように提案してください。

はい!わかりました!

ちなみに、ナースが先にやっていた場合もあります。
その場合、リハは次何をしますか?

うーん、、、ROMですか?

ROM好きですねぇ~
正解は、トイレ動作評価です。
早めにできるADLを確保してあげることが大事です。
ADLはわかりますか?

はい!
えっと、基本動作とセルフケアに分かれています。

そうですね。
ADLについては以下のリンクもぜひ参考にしてください。

それと、追加で、本人が息抜きできる余暇活動も大事です。
ベッドの上、もしくは車椅子の上でただただテレビをボーッとみているようにはさせない方がいいと思います。

それは、作業療法士がやることなんでしょうか?
よくADLの専門家とは聞くので、ADLに介入するのはよくわかるんですけど…

間違って欲しくないのは、作業療法士はあくまで「作業」の専門家です。
ADLだったら正直理学療法士もみないといけません。
ここらへんは間違ってはいけない。
作業については以下のリンクにいって勉強し直すといいと思います。

すみません、なかなか理解できませんでした。

いいんです!
正直、作業機能障害という考え方がOT特有で、他にはない考え方です。
この考え方を頭の中に入れ、作業機能障害にさえ介入していれば作業療法士として合格です。
そして、その考えの中で
- 生活のバランス
→作業療法の言葉で言う「作業バランス」
を安定化させること!
これが、入院患者さんには必要なんですよー。
ここをミスすると、うつ病や認知症、アパシーを悪化させる恐れがあります。
また、リアルな話、自分で動かなくなりますので、活動量が減ります。
そうすると、患側を使う頻度が減りますので、治りにくくなりますし、廃用が進みますよね。

つまり、余暇時間の使い方も介入する必要がある、と?

そうですね。まぁ、簡単に言うと
1日全てを把握し、まずは1人で入院生活を送ることができるようにしてあげること。
これはどの疾患でも同じですね。これが作業療法士のボトムアップです。

「ADLをみる」というよりは「1日の生活をみる」ということですね。
ポイント3:家族や本人からの情報聴取

最後に3ですね。
情報収集です。本人と家族から行います。
これは、 病気をする前のADL能力を取るということと、本人が入院をどう捉えているかを図ります。
生活行為向上マネジメントの「生活行為聞き取りシート」をうまく使って欲しいです。
なんか使いにくい…と思われる場合も考えて、私が使っている病前ADL聞き取りシートも添付しました。
ぜひ参考にしてください。
▼生活行為向上マネジメントについての過去記事はこちら
▼病前ADL聞き取りシート(ご自由にお使いください)


どうして、病前のことが必要なんですか?

予後予測、簡単に言えば、最終ゴールの機能レベルを想像しやすい、ということと、本人の言っていることと家族の言っていることを比べて、患者の認知機能や短期記憶、発言の信憑性を評価することができますよ。
以前記事を書きましたので、以下の記載も参考にしてください!
大腿骨頸部骨折・急性期のリハビリ介入の流れ・まとめ

では、今回の介入を振り返っていきましょうか。

えっと、まずは安静度?の確認です。
ドクターに聞いて、やってはいけないことを確認します。

そうですね。一番最初に必要です。

つぎに、車椅子で生活できるかを見ます。
1日の生活のバランス?作業機能障害?をみます。

そうそう。作業療法士の専門分野ですね。

最後に、怪我する前の生活について聞きます。
これは、予後予測やリハビリ目標?をセッティングする時に必要です。

素晴らしい!
ここまで大変お疲れさまでした!
参考図書
バイザーと学生のやり取りをご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか?
不明点などあれば、気軽にtwitterなどで聞いてくださいね!
では、レベルアップを目指す皆さんにご紹介したい参考図書です。
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