大腿骨頸部骨折・回復期リハ解説①【導入と基本的な思考】
こんにちは!OTだみんです。
以前、大腿骨頸部骨折の急性期でのリハビリについて解説した記事を書きました!
今回はこの続きとして、回復期における大腿骨頸部骨折のリハビリテーションについてみていきたいと思います。
この記事はオンラインプリセプター、オンラインバイザーという観点で、指導内容を会話形式で行なっていきます!
登場人物

バイザーとして解説していきます!

症例に対する介入について、一緒に学んでいきます!
大腿骨頸部骨折・回復期リハ解説
大腿骨頸部骨折・回復期のリハビリ介入の流れ

それでは、先日の患者さんが急性期から回復期に上がってきたとしましょう。
そして、あなたが回復期担当です。
情報を見てみましょう。
A氏 85歳 女性
6月1日夜中に自宅内で転倒。起き上がれず救急搬送。
右大腿骨頸部骨折と診断。当日ハンソンピンを使用して骨接合実施。
6月10日に回復期に転棟。
現在安静度は疼痛に応じて全荷重可能

急性期スタッフからは、
- 起居動作見守り
- 移乗動作軽介助
- 平行棒内歩行1往復可能
- トイレ動作軽介助
と聞いています。
他に聞きたいことないですか?

えっと…わからないです。
とりあえずありません。

では、聞くことなしでやっていきましょうか。
意外と、これぐらいしか急性期からの情報がないことも実際ありますので。

情報が少ないと、なんだか怖いです。

まあ、実習ですから。一緒にやっていきましょう。
では、何を評価しないといけないですか?何を介入しますか?
ちなみに、学生の頃は
評価→介入
と時間を作ることができますが、
新人になると、評価しながら介入になります。
なので、ここでは、実践を踏まえて評価しながら介入しましょう。
では、まずは何を評価しますか?

えっと、ROMですか?

なるほど、その理由は?

えー、うーんと…わからないです。
どれぐらい曲がるかなと…

疾患管理の上で、ROMをしようと言うのであれば、それはOKです。
評価単体の場合は、セラピストがPT、OTと2人入っている場合は、どちらかに任せても構いません。

PTさんに任せたら、OTは一体何をみたらいいんですか?

テクニックとして1つ、正解を1つで計2つお教えしますね。
まずは正解から。
<正解の動き>
急性期スタッフに、病前の情報や家屋の情報、キーパーソン、リハビリ目標を聞いておくことが必要です。
それらを聞いた上で、
- 本人の動き
を観察評価します。

目標に対してどこまで進んでいるのか、退院レベルまで考えると今どの地点なのか。ということですね。

はい、わかりました。
もうひとつのテクニックとはなんですか?

正解の動きを効率良く行うコツです!
テクニックはこちら!
<テクニック>
<正解の動き>で急性期スタッフにリハビリ目標などを聞くタイミングで、急性期スタッフの介入方法を聞いておく。
それを続けながら、さっき書いた「観察評価」を行います。
そうすれば、見栄えもいいし、「混乱して何したらいいかわからないまま介入時間を迎えた」なんてこともないです。

なんかそれってずるいですね…

そこは要領よくいったほうがいいですよ!笑
おそらく担当は新人になったら3人から5人程度持たされるようになると思いますので、1人に100%思考を使えなくなるわけです。
どこかで手を抜く、要領よくすることが大切。

ちなみに、急性期スタッフが目標を設定していない場合があります。
これは、最終ゴールが見えにくかったり、1.2日といった短い時間しか関われなかったりするからですね。
その場合、こちらが目標設定しないといけません。

なるほど
目標設定ですか。いきなりですか??

なんとなく頭の中で作っておいて、評価介入し、目標をアップデートする
って感じですね。
この人は病前の情報は今ありますか?

あ、ないです。
聞いてきますー!

聞いてきました!
以下のようだとのことです。
病前自宅で一人暮らし
それまで主要な病気にかかったことないため、家の中は家屋改修もなく、介護保険もない
杖もなく独歩であるいていた
2階はあるが、今は使っていない
買い物は近くのスーパーまでいっていた
調理も掃除も洗濯も自分で行なっている
娘が月に1回見に来ている

それは誰からの情報ですか?

娘さんからの情報とのことでした。

娘さんからの聞き取りをしたのは適切ですね。
高齢者の場合、本人の情報だけで判断してはなりません。
なぜなら、短期記憶の低下や見栄張りで、レベルを高くいったり、だいぶん昔の情報を話したりするためです。
ですので、確実に客観的な情報を取るためになるべく家族やケアマネから話を聞いてほしいです。
無論、本人からも聞きましょう。
生活の中での「希望」や「思い」は本人しかわかりませんから。

それで、なんとなく目標設定してみましょう。
※目標設定に関しては、以下のページでも詳しく載せてますので、ぜひ参考にしてください。

なんとなく目標設定って、どう言うことですか?

そうですね。具体的な手順を考えましょう。
まず、現実的にどこに退院することになるか、ということですね。
自宅復帰なのか、施設入所なのか、住むところを変えないといけないのか。
これらを考える上で、「予後予測」が必要になります。この予後予測に関しては、以下のリンクで詳細に説明していますので、ぜひ読んで欲しいです!

この人の場合、
- 基礎疾患がない
- 骨折が1回目
なので、おそらく病前のレベルに戻れる可能性がありますが、
1.高齢(80歳以上)
なので、1段階ADLレベルを落とす必要があります。
つまり、今まで何もなしで歩いていたのですが、今後は杖で歩くような生活になる、ということです。
長距離移動する際は歩行車、シルバーカーを使用する可能性もあります。これは、屋外歩行訓練をしてみないとわかりません。

なるほど、
基礎疾患のない高齢者の初めての転倒骨折だから、完全に回復はしないけど、同じぐらいの生活レベルにはなるだろうと予測するのですね。

その通り。
初回介入前にそこまで頭の中で持っていればOK
で、観察評価なのですが、どんな場面を観察したらいいと思いますか?

えっと…ADL場面でしょうか。
退院するためには獲得しないといけないでしょうし

いいですね。ADL場面はみないといけません。
他には?

えっ?他に何かあるのでしょうか

作業療法士なら、1日の中でどんな活動をしているのか、生活バランスを見ておかないといけません。
ずっと着いておくことはできないでしょうから、担当看護師に話を聞くといいでしょう。

なんでそんなことをしないといけないのですか?

作業療法士は、「作業」をみるのが仕事だからです。
これについては、以下にも書きました。

簡単に言えば、その人が感じている経験すべてが作業で、、、なんですが、
まあ、やっていることは、
- 休息
- 余暇活動
- 仕事
- ADL
を自分でどの程度こなせるか、生活の中でできているかを把握することです。
論文(諸星,京極:身体障害を有する地域高齢者における作業的挑戦、作業参加、作業機能障害、抑うつ、健康関連QOLの構造的関連性の検証,2019)でも言われていますが、
この4つがバランスが悪くなったり、自分がやりたいようにできない状態が続いたりすると
「QOLの低下」
「抑うつへの影響」
が低下し、活動性が下がる、と言われています。
特に大腿骨頸部骨折は、移動に影響をもたらしますので、この作業機能障害、作業バランスへの影響が大きくなります。

ふむふむ、なるほど。
…確かに今のAさんは作業バランスが悪い気がします。

では、そこは介入していかないといけませんね。一つ介入しないといけないところが出ました。
あとは、

ADLですね!!!!!

う、嬉しそうですね…
そうです。ADLです。これは、大切な基準です。
では、ADLはどこを基準としますか?退院するとき、どのレベルにいればいいですか?

えっと、自宅なのか、それとも施設なのかで変わる、といってました。

では、施設でした?自宅でした?家族の意向は?
もしかしたら今回の転倒が原因で施設入所を決断するかもしれません。

えっと、、、
情報はないです、、、

こういう情報はMSWが強いです。早い段階で話を聞いているかもしれません。
また、もしかしたら、Nsも何か聞いているかもしれません。担当看護師ですね。
なので、この2職種に連絡をとってみるのがいいかもしれません。

わかりました。
聞いてみます。
そういえば、皆さん忙しいでしょうし、そのタイミングで聞くのが一番いいんでしょうか。
なにかコツとかありますか?

学生さんの場合、バイザーに「話を聞いてくれる時間を作ってくれる」ように依頼することが1番楽です。
一方、新人になったらこうはいかないため、コツをお教えしましょう。
朝に「今日余裕があるか」「患者について話がしたい」と聞いておき、アポイントをとっておく!ということですね。
そこで「約束」してしまえば、どんなに忙しい人でも時間を空けてくれます。
ポイントは話しかけるときに
「おはようございます!ちょっと話聞きたいのですが、いつなら時間ありますか?」
といってみることです。そうすれば、後からその人が訪ねてくるか、「今いいよ」と言ってくれます。

はい!では明日いってきます!
でも、今日は何したらいいですか?

観察してみましょう。
私がどういう感じで患者に入ってるかも含めて見てみてください。
そして、観察から何がわかるか、ケースノートに書いてみてください。

わかりました。
えっと、ケースノートはどうやってかけばいいですか??

(ケースノートの作り方はここで説明すると長くなりますので、別記事で書く予定です!
少しお待ち下さいね!)

さて、今日のリハビリが終わりました。
今回は、初めにも言ってましたが、急性期の介入の方法を受け継ぎ、介入をしました。
そこの中で、観察で何か評価できましたか?

いえ、以前急性期の情報は正しかったなぁということしか

…なるほど
痛みに関してはどうでした?

痛みですか?平行棒内歩行をしているとき、かなり痛そうでした。

大腿骨頸部骨折と転子部骨折は疼痛が残りやすい部分です。大腿骨の骨折は「人工関節」や「人工骨頭」であれば、術後早期から痛みなく、荷重を積極的にかけていくことができます。骨接合は疼痛があれば、なかなか積極的には荷重をかけていくことが難しいですね。

え?
でももっとガンガンリハビリしていかないといかないのではないのですか?

どうしてそう思いますか?

だって、退院のことも考えると時間がない気がしますし、それが本人のためのような気がします。

結構なセラピストが陥りやすいポイントにきましたね。
ちなみに、この人はこの病院に大体どのくらいの期間入院できますか?

?!!
えっと、1ヶ月ぐらいですか?

回復期病棟では骨折系は3ヶ月ですね。
脳卒中は120日、高次脳機能障害があれば150日入院できます。
地域包括ケア病棟であれば、60日ですね。この病棟ではどんな疾患でも関係なく入院できます。

えっと、この患者にはあと3ヶ月もあるってことですね。

そうです。でも、だから焦るな、という意味ではありません。
この患者の安静度はなんでした?

疼痛に応じて全荷重可…
あれ?今疼痛強いですよね?

そうです。疼痛強いですね。

今、全荷重したらまずいのでは??

今体重をかけている場面で、特に痛がっているのはいつですか?

えっと、寝返り、起立のとき?

大腿骨近位部骨折では、股関節内外旋する運動が痛いです。
どうしてでしょうか。

え?え?えっと、、、

骨折しているところが捻られるからですね。
急性期スタッフが生活動作訓練に積極的に入れていない原因でもあります。

つまり、どうすれば?

リハビリスタッフは、これはPT OT関係ないのですが、疼痛が今どのくらいあり、本人と相談しながらどのレベルまで体重をかけていこうか、話し合うことが大事です。
本人が認知症で正しい判断ができない場合でも、疼痛がどの動作のときに強くなっているか、どの程度疼痛を感じているかを評価しておく必要があります。
認知症の場合は、疼痛=その動きは絶対したくない、もしくは離床したくない、につながることがあり、病棟での活動性が低下するからです。

疼痛を感じている場合、積極的なリハビリはしない、
どの動作の時に疼痛を感じているかを確認する、ということですね?
PTの方がかなりしっかり荷重をかけていた印象があるのですが、どうしてでしょうか。

先ほど、疼痛に応じて介入のスピードを変えろと言ったばっかりで申し訳ないのですが、その疼痛を1番効率よく治すのも、荷重をかけること、なんです。
脳が「あ、ここ痛みがあるけど、使わないといけないんだ!早く治そう!」と認識してくれるようです。

それって一見矛盾に思えますね…?

アンビバレンスですね。
では、本題に戻りましょう。
・疼痛評価
あとは、何か観察で見ることができました?どんなことでもいいので話してみてください。

そうですね…
あ、そういえば、「リハビリです」と呼びに行った時、ベッドで横になってぼーっとしていました。
この間、「作業バランス」について聞いたんですけど、その観点からすると、何もしない時間ってあまりよくない、ですよね?

素晴らしい。
一応、本人にとって「休息」という観点でぼーっとしているのであれば、意味がある活動をしている認定になるのですが、昼の、それも14時にぼーっとするほど何か活動をしているとは思えません。
いい点に着目しましたね。
では、どうしてベッドで横になっていたのでしょうか。

えっと、なんでだろ

抑制がかけられている点もあるかもしれません。
Nsは勝手に移動しようとすると危険であるため、本人に
「どこか行きたくなったらNsコールを押してください」と指示します。
特に今は移動手段が車椅子だけですし、移動が自立になっていません。

…ということは、移動を自立にしてあげることが本人にとって1番いいと?

その通りです。いいですね。
では、次の章からは今でた「なんとなく」の方針から、みんなに発表できるような「短期目標」「長期目標」「Goal目標」を作るためにやっていきましょうか。

はい、わかりました!
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