大腿骨頸部骨折・回復期リハ解説②【目標設定】
こんにちは!OTだみんです。
この記事は、大腿骨頸部骨折のリハビリ解説シリーズの3記事目になります!
大腿骨頸部骨折シリーズ、過去記事はこちら!
今回はこの続きとして、回復期における大腿骨頸部骨折のリハビリテーション、パート②として、目標設定の考え方を具体的に見ていきましょう。
この記事はオンラインプリセプター、オンラインバイザーという観点で、指導内容を会話形式で行なっていきます!
登場人物

バイザーとして解説していきます!

症例に対する介入について、一緒に学んでいきます!
大腿骨頸部骨折・回復期リハ解説
大腿骨頸部骨折・回復期の目標設定の流れ

引き続き以下の症例についてです。
前回のおさらいはぜひしておいてくださいね!
A氏 85歳 女性
6月1日夜中に自宅内で転倒。起き上がれず救急搬送。
右大腿骨頸部骨折と診断。当日ハンソンピンを使用して骨接合実施。
6月10日に回復期に転棟。
現在安静度は疼痛に応じて全荷重可能

今回からは目標設定について話していくのでしたね。
MSWさんからお話を聞きました?

家族は一応退院した後、同居することを考えている、と言っていたようです。

なるほど。どんなレベルでも自宅退院といっていましたか?

ええ?!
えっと、わかりません…

家族の方を非難するつもりはないのですが、ADL自立レベル、もしくは一部介助レベルでないと同居しない!!という方が多い気がします。
確かにそれ以上の介助量であれば、介護は大変になりますし、共倒れ、なんてことにもなる可能性もありますね。

え?そんな状況になる可能性もあるんですか??

前のページの時に私はこの症例はどのレベルまで回復すると言いました?
※参考:予後予測の記事

えっと、前と同じレベルまでには回復するだろう、と言っていました。

ということは、自宅退院に向けて舵を振ってもよさそう、と言えますね。

確かに、そうですね。

ですので、病院を退院するときにADL目標は「ADL自立」もしくは「見守り/一部介助」にしないといけない、ということです。

それが最終目標ですね!

いや、これは最終目標ではないですね。これは長期目標です。

え?退院の時の目標なのに??

最終目標は、本人がどういう生活を送りたいか、自宅に帰った後どんなことをしたいか、という部分になります。
勘違いしてほしくないのですが、病院内だけがリハビリではありません。生活期に移行しても、本人らしく生活してもらうために、健康を維持してもらうために、リハビリは続けていってもらうことになります。このリハビリを続けていくことが実は「予防的リハビリテーション」にもなります。
いろいろ言いましたが、「本人が本人らしく生活することができるようになる」ができれば、リハビリテーション終了です。そこが最終GOAL、最終目標になります。

本人らしく生活する…ですか。
どう設定したらいいんでしょうか。
買い物に行けるようになる、とか?

本人に聞いたらいいんですよ

え?本人に、ですか?

どうして最終ゴールを本人以外が勝手に設定するのですか?

………!

作業療法士は、患者の心の言葉「Narrative」をしっかりと聞かないといけません。
そして、作業療法士が本人のNarrativeを効率的に聞くための器具や評価方法が存在しています。

でも、先輩の資料とかには、自分で目標を設定してました…

昔は、「パターナリズム」といって、医療者が絶対で、患者はついてこい。という世界がありました。
しかし、2010年を超えてきて変わってきています。
それは「クライエント中心」という考え方ですね。
医療もあくまで「サービス」なんです。
なので、主体は医療者ではありません。
現に、「セカンドオピニオン」って聞いたことありますでしょ?

…確かに!

それに、作業療法は特に「感情」や「思考」を大切にします。
え??と思った方は以下のリンクから復習してくださいね!

ですので、必要な時以外は、クライエント中心で目標設定をします。
特に最終GOALはクライエントの意見で構成します。

よく、
- 短期目標
- 長期目標
- 最終目標やGOAL目標
という言葉を聞きますけど、いったいどう違うんですか?

いい質問です。
最初に最終目標=最終GOAL=GOAL目標から決定していきます。
これは先ほど言ったのですが、基本的にはクライエントとの会話の中で決定します。
そして、その目標に沿って
- 長期目標:3か月~6か月
- 短期目標:1か月~2週間
を設定します。
この短期・長期目標に関しては、最終目標から逆算していきます。
最終目標が
「買い物に毎日一人で行けるようになる」になるとしましょう。
その場合、
- 長期目標は「ADL自立/IADL一部介助」
- 短期記憶は「入浴動作自立」
みたいな感じですね。

長期目標と短期目標で、期間がバラバラなのってなんでですか?

いい質問です。
この目標の期間の設定は基本的には「疾患」によって変化します。
例えば、足をひねった場合と脳梗塞の場合、同じ期間で回復できますか?

いや、明らかに足をひねった場合の方が回復は早い…と思います。

足をひねった場合は1週間の目標、2週間の目標と設定するかもしれません。
1週間が短期目標、2週間が長期目標です。
基本的には、長期目標は退院が早い疾患に関しては「退院時目標」と思ってもらってもいいです。
一方、脳梗塞は1か月が短期目標、3か月が長期目標です。
1か月経過するたびに長期目標は新調しないといけません。なぜなら、1か月前と状態が変化しているからです。

なるほど。今回の患者さんの場合は長期目標は…

頸部骨折は「早く退院できる疾患」に含まれますので、長期目標は「退院時目標」になります。

じゃあ、長期目標は「ADL自立」でいいですか?

最終目標は決めました!?

…そうでした。
どうやって聞くのがいいのでしょうか。

そのためのツールがあります。
「生活行為向上マネジメント」というツールの中でも「興味関心チェックリスト」というものです。
このリストは、さまざまな生活のことや趣味のことが書かれており、生活や趣味、その人のことを詳しく聞くための格好のツールになります。ぜひ使ってほしいですね。
生活行為向上マネジメントに関しては、記事でも紹介していますし、生涯教育講座の中でも組まれているほどなので、非常にポピュラーな評価です。
ぜひ使ってください!!
ほかにも、ADOCやCOPM、認知症絵カード評価などがあります。

…いろんなのがあるのですね

このクライエントの気持ちや意思、興味などを引き出すのは作業療法士が医療職の中でも一番得意ですからね。
もしも、作業療法についてもっと知りたくなったら以下の本から勉強することをお勧めします。

と、とりあえずどうすれば?

興味関心チェックリストを使って話を聞いてくることをお勧めします。
本人がどう思っているかを聞きましょう。

はい、聞いてきます!


どうでした?

- 「娘に迷惑をかけたくない」ということと、
- 「地域の友人と買い物に行っていた」
- 「遠出には興味ないが、デパートにはいきたい」
と言っていました。

いいですね!!よく引き出しました!!

ただ、その話を聞くのに1時間かかってしまいましたが…

それで全然いいのです。
慣れてくると悪い意味で最終ゴールを設定せず、長期目標のADL自立しか考えないOTさんが増えてきます。
ぜひ、最終ゴールを設定してあげることを、臨床家になっても続けてくださいね!

はい!

では、長期目標を設定していきましょう。

やっぱり、ADL自立でしょうか。

それもあります。
退院時目標にするのであれば、もう一声行きたいですね。

えっと…

それは、最終目標につながるようなものですね。
例えば、屋外歩行500m可能とか、買い物動作自立もしくは一部介助とか

買い物動作って、どうやって評価するのですか?

え?実際に、病院に近いところのスーパーやコンビニまで歩いていき、買い物動作をやってもらうのですよ。買い物動作訓練ですね。

おお!!いいですね。

おそらく、買い物が行けるようになるまでは、入院期間ギリギリ、つまり、退院間近になるとは思いますけど…
そこを目指していくのはいいと思いますよ。

そうしてみます!!

では、長期目標は3M(3か月)
「ADL自立/病院の近所のスーパーまで買い物に行くことができる」ですかね。
短期目標はどうしましょうか。

どうなんでしょうか。

そう、なんとなく退院時の目標が設定されたので、それを達成するために、今何が足りないのか、評価していきましょう!
次の話は評価の選定についてです!

はい!!お願いします!!
コメント